野方駅から歩いてすぐのところに、カウンター数席だけの小さな鮨屋があります。
おたや。
2023年にオープンして3年。派手な宣伝もなく、完全予約制のコースのみ。
それでも常連客が絶えないのは、全ての仕込みを一度でも見ればわかる気がします。
おたやの代表、御旅屋さん(中野区野方)

取材当日、仕込みの様子を見せてもらいながら話を伺いました。
包丁を動かしながら語ってくれた言葉は、どれも飾り気がありません。
営業日は必ず、朝から市場へ行く

ナカマニ普段の一日はどんな流れですか?



毎朝6時半ごろ市場に向かって、9時半〜10時ごろ帰ってきます。
そこからオープンまで仕込みしてって感じですね。営業日は絶対に市場に行きます。
市場に毎日通う理由はシンプルです。
魚は毎日状態が違います。自分の目で見て、信頼できる仲卸の人に目利きをしてもらって、その中から選ぶ。
それが仕入れの基本になっています。





僕ももちろん目利きします。
でも今は、僕より何百倍も魚を見てきた人たちと関係を築けているので、その人たちの目利きをまず通してもらって、その中から自分が選ぶようにしています。
市場の人との関係は、3年かけて少しずつ積み上げてきました。
余った魚を引き取ったり、お互い助け合いをしたり、そういう付き合いをしてきたからこそ、いい魚が回ってくることもあります。



やはり毎日顔を出して、覚えてもらって、言葉を交わすことが大切ですね。
ネットでポチッとすれば食材が届く時代だからこそ、しっかり通って顔を出す。
いい魚を仕入れるのに必要なのは、やはり人間関係だと思います。
コースは握りが主役。一貫目に、1番気持ちを込める





コースはどんな構成ですか?



握りが10〜12貫、つまみが6〜7品ぐらいで、コースの内容は毎日変動するんですけど、握りはしっかり出しますね。
やっぱり鮨屋なので握りはしっかり食べてほしいなと思っています。
日によって変わりますが、一貫目に出すのは、春子鯛(かすごだい)や、イカであることが多いとのこと。
派手なネタではありませんが、手を加えることで美味しくなるネタと言います。





なぜ一貫目にそのネタを出されるのですか?



最初の一貫は1番大事だと思うんです。
一貫目から徐々に上がっていくコースが好きなので、派手さはないけど仕込みで差別化ができるネタを最初に持ってくるのが好きです。
お客さんには言わないですけど、気づいてくれる人は気づいてくれるんです。「あ、この鮨は仕事しているな」って。
小さくて、仕込みが面倒で、手数のかかる魚。だからこそ味に差がでます。
小さな魚にこそ、仕事がある





仕込みの中で一番大変なのはどこですか?



大変なのは先ほど出た、春子鯛(かすごだい)などの小さな魚ですね。
大きい魚と違って、小さいので1匹で二貫とかしか取れない。
本当に人数分なければいけないから手数が全然違いますし、仕込みもとても大変です。
春子鯛(かすごだい)やコハダは、その代表格です。
春子鯛は、塩で締めて、日本酒でさっと湯引きして、数日寝かせて丁寧に仕上げて初めて一貫になります。





仕込みで一番心がけていることはなんですか?



綺麗に、丁寧に。
仕込みが丁寧であればあるほど、絶対いいものになると思いますね。
仕込みが雑だと全部雑になっちゃうんで。ネタがうまくても、骨や鱗が口に入ったら一気に嫌な気持ちになるじゃないですか。
だからこそ綺麗に、丁寧にこだわります。
包丁の入れ方ひとつで、身の割れ方が変わります。細かいことをずっとやり続けています。
キッチンペーパーは、5種類使い分ける





キッチンペーパーがたくさんありますね?こんなに種類が必要なんですか?



今5種類ぐらい使い分けてます。
タオルで拭くとタオルの匂いが魚についてしまうんです。だからこそ匂いのつかないキッチンペーパーを使う必要があります。
魚から出るドリップを吸うものとしないもの。水気を取るもの、腐敗を防ぐもの、色を保つものとか、いろいろ分けてやってます。
魚は市場から帰ってきたその日に使うものもあれば、3〜4日寝かせてから出すものもあります。
その間ずっと、最高の状態を保つためにキッチンペーパーを使い分けています。





例えばマグロは色が変わりにくいもので包んで。
ツルツルのペーパーを巻いて保存しておくと色が変わらないんです。
せっかく仕入れてきた魚を、いつでも最高の状態で寝かせられるようにしてます。
シャリは、お客さんが来る時間に合わせて毎回炊く





シャリへのこだわりを教えてください。



酸味がたったシャリで、お客様の来る時間に合わせて毎回米を炊いています。
楽しようと思えば、一気に炊いて保温しとけば握れないことはないと思うんです。
ただやっぱりシャリが大事なので、どんなに忙しくても時間を逆算してシャリを作ることは絶対ですね。
通常の半分以下の水で炊いて、そこにお酢を入れることで米に水分が戻り、1粒1粒がほぐれていき、口の中で溶けるような食感に。





予約制でわざわざ時間を作って来てくれてるのに、こっちが合わせられないのはおかしな話だと思うので。
シャリの賞味期限は2時間。
時間が経つとパラパラになってしまうので、コースの回転数に合わせて、その都度炊きあげます。
お酢は3種類をブレンドする。その配合に2年かけた





お酢にもこだわりがあるんですか?



お酢は本当に大変でした。
現在は赤酢を1種類、米酢を2種類、合計3種類をブレンドして、あと海水からできたお塩も入れてます。
このブレンドにたどり着くまでが、一番大変だったといいます。





本当に足し算と引き算でした。
繰り返し繰り返しながら『この味にするには、あれとこれを入れて』など。
もう赤酢とかいろんな種類を全部買いましたし、市場に出ているお酢はほぼ試したんじゃないかな?というぐらい。
そうやって探し続けて、今の3種ブレンドにたどり着きました。
酸味が効いていて、うま味があって、甘くない。昔ながらの江戸前に近い、個性的なシャリです。
修行はほぼなし、独学。それでも続けてこれた理由





もともとはどんな経歴だったんですか?



もともと就職したのは航空会社だったので、飲食の世界をやるとは全然思ってなかったんですよ。
伊豆大島に移住して、縁あって旅館の鮨屋を手伝うことになって。コロナで職人がいなくなったから僕が握り始めて。
あとは独学ですね。
お手本がいない分、自分の味覚だけを頼りに、食べて、聞いて、試し続けてきました。





独学の難しさはありましたか?



お手本がいないから、自分の味覚を頼りにするしかない。
いろんなところで食べて、聞けたら聞いて、持ち帰ってやってましたね。
人一倍考えないとダメなので。利益はほぼ全部、鮨のために使ってますし、いろんなお店に食べに行って勉強しています。
ある超高級店の大将にこう言われたといいます。



『俺たちはガチガチに修行しちゃったからこの考えしかできないけど、君はいろんな人から色々聞けるから、既存の枠にとらわれない発想ができる』って。
「たしかにそうだな」と。だからこそ、美味しくするにはどうすればいいかはめちゃくちゃ考えます。
型がないからこそ、考え続けてきました。それが今のおたやの鮨につながっています。
「なんで普通の見た目なのに美味しいんだろう」が、理想の鮨





理想の鮨とはどんなものですか?



キャビアをのせるとか、金箔をかけるとか、そういう派手な鮨じゃなくて。
なんか派手に見せないけど、しっかり仕事してるっていうのが理想ではあります。
余計なことをしゃべらないようにして『なんでこんな普通の見た目なのに美味しいんだろう』って思ってもらえるのがいいですね。
高級食材を積み上げれば、それなりに美味しくなります。
でも大将が目指すのはそこではありません。
手間がかかるけど、丁寧な下処理をすることで美味しくなる鮨。





お客さんへのメッセージはありますか?



敷居が高いって思われがちですけど、緊張する空間じゃないんですよ。
誰でもウェルカムなので、まず来ていただいて。
嫌な気持ちでは絶対帰らせないので、ぜひ来てください!
おたやのおまかせコース
おまかせコース。
その日によってネタやコース内容は変わります。
今回頂いたときのコース内容を紹介します。
カツオ


アワビ


あん肝


カニの茶碗蒸し


イカ


アジ


春子鯛(かすごだい)


車海老


ワラサ


マコガレイ


タコ


マグロ(赤身)


中トロ


ホッキ貝


穴子(アナゴ)


卵(タマゴ)


握りと一品で、素敵なコースでした。
店舗情報:おたや(中野区野方)


今回は、野方にある鮨「おたや」さんに伺わせていただきました。



お店の詳細は、インスタを参照にしてぜひ行ってみてください!
| 概要 | 詳細 |
|---|---|
| 店舗名 | おたや |
| 住所 | 東京都中野区野方5丁目3−1 野方ウィズ 205 |
| 最寄り駅 | 西武新宿線「野方駅」から徒歩2分ぐらい |
| 営業時間 | [月・火・木〜日] 12:00〜14:00/17:00 – 22:00 |
| 定休日 | 水曜日(詳細はインスタ参照) |
| 電話番号 | 03-5356-7316(完全予約制) |
| 店舗情報 | Instagram @otaya_sushi |

